
塗装は擁壁を守る保全工事
住宅や寺院、道路沿いなどで見かける「間知石(けんちいし)擁壁」は、敷地の高低差を支え、土砂の流出や地盤の崩壊を防ぐ重要な構造物です。
非常に丈夫な構造物というイメージがありますが、長年にわたって雨風や紫外線にさらされることで、表面は少しずつ劣化していきます。
そこで重要になるのが塗装によるメンテナンスです。
今回は、間知石擁壁を塗装する理由と、その役割について詳しく解説します。
間知石擁壁はコンクリート製の間知ブロックや天然石を積み上げて施工されており、常に雨水や湿気の影響を受けています。
表面には汚れやコケ、藻、カビなどが付着しやすく、美観を損ねるだけでなく、水分を保持しやすい状態になることで劣化を早める原因となります。
特に日当たりの悪い北面や湿気が多い場所では、生物汚染が進行しやすく、定期的なメンテナンスが欠かせません。
また、コンクリート製の間知石は経年によって中性化が進行します。
コンクリートは本来強いアルカリ性ですが、空気中の二酸化炭素と反応することで徐々にアルカリ性が失われます。
この現象を中性化といい、中性化が進行すると内部の鉄筋がある構造物では錆が発生しやすくなり、耐久性の低下につながります。
そのため、塗装によって表面を保護し、二酸化炭素や雨水の浸入を抑えることは、コンクリートの劣化を遅らせる有効なメンテナンス方法の一つです。
塗装工事では、まず高圧洗浄によって長年蓄積した汚れやコケ、脆弱な旧塗膜を除去します。
その後、ひび割れや欠損があれば補修を行い、下地の状態を整えます。
下地に適したシーラーやフィラーを施工して密着性を高めたうえで、中塗り・上塗りを行い、耐候性・防汚性に優れた塗膜を形成します。
擁壁は雨水や湿気の影響を受けやすいため、透湿性を備えた塗料を選定することも重要です。
内部の水蒸気を適切に逃がしながら、外部からの雨水の浸入を抑えることで、塗膜の膨れや剥離を防ぎます。
ただし、擁壁は土圧や地下水の排水を考慮して設計されているため、排水孔(水抜き穴)を塗料で塞いではいけません。
排水孔が機能しなくなると擁壁の背面に水圧がかかり、構造物へ大きな負担を与える恐れがあります。
そのため、塗装工事では擁壁本来の排水機能を損なわないよう施工することが重要です。
間知石擁壁の塗装は、見た目を美しくするためだけの工事ではありません。
塗膜によってコンクリートを保護し、劣化の進行を抑えることで、構造物を長持ちさせる重要な保全工事でもあります。
適切な下地処理と塗料選定、そして擁壁の構造を理解した施工によって、安全性と美観を長期間維持することができます。
擁壁も建物と同様に定期的な点検とメンテナンスを行い、大切な住まいを支える構造物を長く守っていきましょう。
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